「Rebuilding Saigon: Urban Development and Architecture in Post-War Vietnam」 - 廃墟から蘇る都市、ベトナム・サイゴンの建築的変遷を辿る!

 「Rebuilding Saigon: Urban Development and Architecture in Post-War Vietnam」 - 廃墟から蘇る都市、ベトナム・サイゴンの建築的変遷を辿る!

ベトナム戦争の終結後、サイゴンは壊滅的な被害を受けた。爆撃や戦闘によって街は瓦礫と化した。しかし、ベトナムの人々は諦めなかった。彼らは希望を胸に、荒廃した街を再建し始めた。このプロセスは単なる物理的な再建にとどまらず、都市のアイデンティティ、社会構造、そして建築様式そのものにも大きな変化をもたらした。

「Rebuilding Saigon: Urban Development and Architecture in Post-War Vietnam」は、この複雑な再建プロセスを深く探求する学術書だ。著者は、ベトナムの建築史学者であり都市計画家であるNguyen Thi Phuong Nga氏。彼女は長年にわたり、サイゴンの都市開発と建築について研究を重ねてきた。本書では、彼女の豊富な知識と経験が活かされ、戦後のサイゴンにおける建築の変遷が詳細に分析されている。

複雑な再建プロセスを解き明かす

本書は、単なる建築史の記述にとどまらない点が魅力だ。著者は、当時の社会情勢、経済状況、そして政治的な背景を丁寧に説明することで、建築物そのものを超えた、より広範な文脈の中でサイゴンの再建プロセスを理解することを可能にしている。

例えば、本書では、戦後間もない時期に、アメリカからの援助金を用いて建設された近代的な高層ビル群が紹介されている。これらの建物は、当時のベトナム政府が目指した「近代化」という理念を体現していたと言えるだろう。しかし、同時に、アメリカの文化や価値観がベトナム社会にどのように浸透していったのか、その影響についても考察されている。

また、本書では、戦後のサイゴンにおいて、伝統的な建築様式と西洋の建築様式の融合が見られたことも紹介されている。例えば、仏教寺院の屋根に近代的なガラス張りの壁を取り入れた建築物など、当時の人々がどのように伝統と現代性を両立させていったのかが興味深い事例として挙げられている。

図版と地図で視覚的に理解

本書の大きな特徴の一つは、豊富な図版と地図が掲載されている点だ。当時のサイゴンの様子や、再建された建築物の写真、そして都市計画図など、視覚資料を通して、より深く理解することができるようになっている。特に、戦前のサイゴンと戦後のサイゴンの街並みの変化を比較できる地図は、著者の緻密な研究成果を感じさせる。

読者層と本書の意義

「Rebuilding Saigon: Urban Development and Architecture in Post-War Vietnam」は、建築史、都市計画、東南アジア史に興味のある読者におすすめだ。ベトナム戦争やその後のベトナム社会について学びたい人にとっても、貴重な資料となるだろう。

著者は、本書を通じて、戦後のベトナムがどのように復興を遂げてきたのか、そして建築を通してどのような変化を経験してきたのかを描き出そうとしている。それは、単なる歴史の記録にとどまらず、現代における都市開発や建築のあり方についても考えさせる重要なメッセージを含んでいる。

詳細情報

項目 内容
出版社 Oxford University Press
出版年 2018年
ページ数 352ページ
ISBN 978-0-19-064174-5
言語 英語

まとめ

「Rebuilding Saigon」は、ベトナム戦争後のサイゴンの再建プロセスを建築という視点から深く掘り下げた学術書だ。著者のNguyen Thi Phuong Nga氏の豊富な知識と経験が活かされた本書は、建築史や都市計画に興味のある読者だけでなく、ベトナムの歴史や社会について学びたい人にとっても、貴重な資料となるだろう。

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